転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


219 魔道リキッドって、実は凄い発明だったんだね



「お母さん。僕、ちょっと作りたい物があるから、作業するお部屋に行っていい?」

「いいわよ。この頃は暑くなってきたからパンケーキを食べに来る人もそれ程いないだろうし、もし忙しくなってもヒルダがいるから大丈夫よ」

「えっ、私?」

「どうせ暇だからって、うちに涼みに来たんでしょ? くーらーの魔道具に使う魔道リキッド分くらいは手伝いなさい」

 ちょっと前まではみんなうちにパンケーキを食べに来てたんだけど、この頃は村のお風呂場に置いてある冷凍庫の氷を持って帰って自分ちでカキ氷を作って食べてるからこの頃は減ってきてるんだよね。

 だから僕がお手伝いしなくても大丈夫みたい。

「ありがとう! じゃあ、お部屋に行って来るね」

 と言う訳で僕は涼しい台所を出て、いつもいろんな魔道具を作ってるお部屋へと移動したんだ。


「魔石をつけたり外したりできる魔道具かぁ」

 僕は取り合えず今まで作ったことがある、回路図を使った魔道具を何個か頭に浮かべて考えて見たんだよね。

 でも、実際にできそうなのって殆どなかったんだ。

 そりゃあ僕が毎回つけたり外したりするって言うんならできるのはいっぱいあるよ。

 でも、その時には毎回回路図に固定して接続しなおさないといけないから、誰でも簡単にできるって訳じゃないんだ。

「これは思ったより大変かも」

 おんなじ魔物でも強いのがいたり弱いのがいたりするように、それぞれから取れる魔石の形はみんな違う。

 だから回路図に魔石をつける時はちゃんとその魔石になったように調整しないといけないんだよね。

「回路図から魔石をはずすのはちょっと無理かな?」

 魔石は魔道具に魔力を供給するものだから何とかなるんじゃないかなぁって考えたけど、こうやって改めて作り方を考えていくとかなり難しい事よく解る。

「う〜ん、じゃあ魔法陣の方はどうだろう?」

 ヒルダ姉ちゃんが欲しがってるのは魔法の水がめだもん。

 もしこっちができそうなら、回路図型の魔道具は後回しにしても問題ないんだよね。

 だけど、やっぱりこっちも難しそう。

「重さを軽くする魔道具みたいには行かないかぁ」

 魔法陣はもうあるから、とりあえず机の中にあった小さな魔石にピュリファイの魔法陣を刻んで実験してみたんだけど、おんなじ場所におんなじように付け直してるつもりでもやっぱりぺか〜って光る場所がずれるんだよね。

 一度なんて光が半分くらいはみ出した事もあったし、流石にこれじゃあ無理かな? って僕は思ったんだ。

「何度か付け直せば使えない事もないけど、調整の為に魔力を使っちゃってまたMPを回復しなきゃいけなくなったら意味無いもんなぁ」

 こっちは回路図型と違って誰にでも付けたり外したりは出来るけど、その調整はやっぱり何度かやり直さないとうまくいかないみたいなんだよね。

 と言う訳で設置型の魔法陣を使った魔道具も魔石を取り外すのも、やっぱり無理って事が解ったんだ。


「じゃあヒルダ姉ちゃんが言ってた、魔物から獲ってきた魔石を魔道リキッドの代わりにするってのはどうなんだろう?」

 魔物から獲ったばかりの魔石には十分な魔力が含まれてるんだよね。

 だからそれを活性化させてから溶解液で溶かす事によって、魔道リキッドを作る事ができるんだから。

「魔石の魔力を取り出す方法かぁ」

 実を言うと、それは結構簡単なんだよね。

 だって魔道回路図につないじゃえば魔力は取り出せるんだもん。

 でも回路図につなぐには当然魔道具を作るための知識や技術がいるわけで。

「それが出来る人なら、自分で魔力を注げるよね」

 結局ここでも、魔石の形が全部違うってのが問題になってうまくいかなかったんだ。


 魔道具の魔石は取り外せないし、獲ってきた魔石から魔力を取り出すのも無理っぽい。

「魔道リキッドって、本当に凄い発明なんだなぁ」

 魔法が使えない人でも簡単に魔道具を使うことができるのは魔道リキッドのおかげだ。

 この発明のおかげで魔石の魔力を回路図につなぐことなく引き出す事ができるようになったんだもんね。

 僕はそんな事を考えながら、初めて魔道リキッドを作った時のことを思い出してた。

 あれは僕が初めて錬金術ギルドに行った時で、ロルフさんに教えてもらいながらがんばって作ったんだよね。

「確かあの時のは、錬金術ギルドの明かりに使ったんだよなぁ」

 ロルフさんが壁についてるちっちゃなビンに入れたもんだから、そこから錬金術ギルド全部の明かりの魔道具に魔力がいくんだって解って僕、びっくりしたんだよね。

「いつか僕も、あんな魔法の明かりを作るんだって思ったんだよなぁ」

 お家にある魔道具全部が一個の入れ物に入った魔道リキッドで動いたら、そこを見るだけで足さないといけないかどうかが解るし、何より一個一個に魔道リキッドを入れて回らなくても良くなるから楽チンなんだ。

 これも魔道リキッドから魔力を供給できるからで、もしこれが無かったら魔法が使える人が全部の魔道具に魔力を注がないといけなかったんだよね。

 あれ?

 そこまで考えて、僕は頭の隅っこになんか引っかかったんだ。

「何が引っかかったんだろう?」

 だからそれが何なのかを考えてみる。

 僕がさっきまで考えてたのって、魔道リキッドの使い方だよねぇ。

 一つの場所に入れたら全部の魔道具が動くってのが引っかかった? う〜ん、ちょっと違う気がする。

 じゃあ、魔道リキッドが無かったら、魔法が使える人が魔力を注がないといけないって事? 何となく関係ありそうだけど、やっぱり違う気がするんだよなぁ。

 後考えてたのは……。

「そっか、魔道具には魔道リキッドから魔力を供給できるって所だ!」 

 魔石を魔道具から取り外して僕のところに持ってこれる。

 獲ってきた魔石で魔道具を動かす。

 ヒルダ姉ちゃんが言ってたこの二つは、どっちも魔道リキッドの代わりに別の所から魔力を持って来れないかなぁ? って事なんだ。

 でね、この内、獲ってきた魔石から魔力を取る事ができないのはさっきできないって解ったんだよね。

 だったら後は魔石を魔道具から取り外すのは? うん、これも無理だってもう解ってるけど、それはあくまで魔道具を動かす魔石を取り外すのが無理だってのが解ってるだけなんだ。

「そっか、錬金術ギルドの明かりとおんなじだ。魔道具と魔道リキッドの入れ物、魔力の供給源は別々でも大丈夫だったんだ」

 魔道具を動かす魔石は、動かす時の魔力の流れが狂っちゃうから付けたり外したりはできないかもしれない。

 でも魔道リキッドは例え使いきって入れ物の中が空っぽになっちゃっても、もう一回入れればちゃんと魔道具は動くんだよね。

 って事は、付けたり外したりしても魔力さえ通るなら大丈夫って事なんじゃ無いかな?

 もしかしたら、できちゃうかも!

 そんな考えから僕の頭の中にはあるものが浮かんでたんだよね。

 後はどうやって作るかだけど……確かそんなのが書かれてたとこがあった気がするし、とりあえず魔道具の本を読み返してみるかな?


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